自説醸造学 1



私説醸造学   ver.1.3.8

1. 日本の酒税法

 日本の酒税法は、昭和28年に制定されました。 *1

 アルコール度数1%以上の酒類を造る場合は、免許を必要としました。

 免許の条件は、ビールでは、年間 2000キロリットル 以上を生産することです。

 清酒の場合は、年間 60キロリットル 。

 どちらにしても、個人が趣味として醸造するのには多すぎます。

 なお、英国などの先進民主主義国家では、通常のアルコール濃度(5%位)のビールやワインを造ることができます。それで、ホーム・ブルワリーが盛んです。

1.1. 酒税法の改正

 日本では、1994年に酒税法が改正されました。

 ビール製造の免許を取るのに必要な最低製造量が、清酒と同じ 60キロリットル に引き下げられました。

 日本酒の蔵元のように、中規模でビール製造が可能になりました。 → 地ビール *2

1.2. ホーム・ブルワリー運動

 酒税法改正は、一歩前進ですが、個人の趣味としての醸造は解禁されませんでした。

 これを機に、日本ではホーム・ブルワリー運動が起こります。

   ・個人の趣味として、自家醸造を楽しむ

   ・酒税法の廃止を要求する

1.3. ドブロク裁判

 「自分がのむ酒は自分でつくる、わが家でのむ酒はわが家でつくるという主張は、人間の自由にとってもっとも根本的な問題提起という、非常に重要な意味をもっている。すくなくとも私は、単なる趣味や道楽としてではなく自由なる人間の尊厳にかけて、酒は自分でつくろうではないかとひろく日本人の全体によびかけたいとおもう。」

ドブロクをつくろう(農山漁村文化協会) 前田俊彦編より

1.3.1 ドブロクをつくろう 

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1.3.2 ドブロク裁判

1.4. 酒税法対策

 裁判官によれば、悪法も法なりということになりますから、法に触れれば御用になります。

 酒税法では、アルコール濃度1%以上の飲物を酒類と定義しています。

 それならば、アルコール濃度1%未満の飲物は、酒税法による酒類ではないことになります。

 結局、アルコール濃度1%未満の飲物は、合法的に自家醸造ができるわけです。 *3 


*1: これ以前の酒税法の歴史については、「ドブロクをつくろう」 農山漁村文化協会 前田俊彦編 および、「ええじゃないかドブロク」 三一書房 前田俊彦編著 を参照してください

*2: それにしても、ひどい名前をつけたものです。私は、下半身局部の病気を連想するビールなど飲みたくはありません。英語では、マイクロ・ブルワリーと言います。

*3: 問題は、1%では酩酊できないことです。もちろん、パイオニアたちは、この問題を見事に解決しました。